フィリピン人一家 同情と法の運用は別問題
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/231093/

不法入国のため、
国外への強制退去処分を受けた埼玉県蕨市のフィリピン人中学生、
カルデロン・のり子さんと両親の一家3人の最終的ともいえる処分の期限が迫ってきている。
法務省東京入国管理局は、
両親が入国管理法違反で日本に不正に入国した以上、
法律を曲げるわけにはいかないとして、
一家の日本滞在期限を今月16日までと通告した。
一家がこれを拒めば17日にも強制送還される。

のり子さんの母は平成4年に、
父は翌年にそれぞれ他人名義のパスポートを使って来日した。
のり子さんは7年に生まれ、地元の小学校を経て今は中学1年生で、日本語しか話せない。

日本人として育てられたのり子さんに衝撃が走ったのは18年7月、小学5年生の時だった。
母親が買い物途中に警官の職務質問を受けて逮捕され、裁判でも執行猶予付きの有罪となった。
一家は強制退去処分の取り消しを求める訴訟を起こしたが、裁判所はこれを認めず、
昨年9月に最高裁で一家の退去処分が確定した。

その後、一家は再三にわたり、在留の特別許可を東京入管に申請している。
そのつど、同入管は、のり子さんが日本育ちであることなど、
人道的な面を考慮して、申請のたびに1カ月程度の短期間の滞在許可を出してきた。
異例の措置を取ってきたわけだが、
法務省は13日までに両親が自主的に帰国する意思を示さなければ、
17日に家族全員を強制送還すると通知した。
その一方で、森英介法相は、のり子さんのみの在留を認め、両親はいったん帰国し、
日本に1人で残ったのり子さんに会うために短期間の再入国許可を出すと表明するなど、
最大限の配慮も見せている。

のり子さんは「3人一緒に日本に残りたい」と涙ながらに訴える。
その気持ちは、痛いほど理解できる。同情もしたい。のり子さんには何の責任もない。
しかし、両親は偽造旅券という悪質な手口で入国した。
日本に不法入国する外国人は、年間約11万人いるといわれる。
年々減少はしているが、日本は欧米に比べまだまだ、入国管理が緩やかだとする指摘もある。
温情を優先するあまり、あしき前例をつくるのはまた問題だ。
違法を見逃した場合、それがアリの一穴となり犯罪を呼び込むことにもなりかねない。